水耕栽培は家庭菜園の中でも最も手軽に始められる栽培方法です。
工夫を凝らせばペットボトルや牛乳パックなどのリサイクル資材や、100円ショップの商品などでカンタンに育てることができます。
この記事では初めて水耕栽培を取り組む人向けに、メリットや向いている野菜、必要な道具、手順についてまとめました。
また成功のポイントについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
水耕栽培は屋内向けに発展した栽培技術なので、水の管理を適切に行えば安定した収穫が望めます。
適切な管理の仕方を身につけてどんどん収穫体験を増やしていきましょう。
それではまいります!
水耕栽培のメリット
- 成長が早い
- 病害虫が少ない
- 農薬使用量の削減
- 品質が安定する
- 自動化も可能
1.成長が早い
いちばんのメリットは根が成長しやすいことです。
土壌の場合ですと根は土に潜り込むように成長します。そのため根は伸びていくのにいくらか土の抵抗を受けるわけです。
水耕栽培ではそうした抵抗を受けません。根は伸びやすく広がっていくのも早くなります。
根がたくさん伸びると取り込む水分や栄養も多くなりますから、成長速度が上がり短い期間で収穫することができます。
2.病害虫が少ない
土耕栽培では主に土をリサイクルして使った場合、病原菌が発生しやすくなります。
水耕栽培では土壌由来の病原菌がないため根腐れや病気になりにくいです。
また土壌有機物を分解する際に発生する有害ガスもなく、根に余計なストレスもかかりません。
培養液のpHを5.5〜6.5に保つことで、その他の病原菌の繁殖も抑えられます。
室内で行えば害虫にさらされるリスクも減り、虫食いや卵を産みつける被害もほとんどありません。
3.農薬使用量の削減
病害虫のリスクが減ると、対策で使われる農薬をほとんど使わずに済みます。
農薬による健康面での不安を抱える人にとっては大きなメリットいえるでしょう。
安全で安心した野菜を育てるのにも水耕栽培は効果的です。
4.品質が安定する
基本的に室内で栽培する水耕栽培は、天候の変化に対する影響を受けにくいです。そのため生育障害を起こしにくく、収穫が安定します。
また水耕栽培では養分が均一に溶け込んでいるため、ムラなく栄養を取り込むことができるのもメリットです。
土耕栽培では肥料のまき方や土壌の性質で土中の栄養がムラになってしまうことがありますが、水耕栽培ではそうしたことがありません。
基本的に水耕栽培は土耕栽培と比べて培養液の水温や栄養素の濃度、pHの調節がしやすいため、安定させやすい栽培方法といえます。
5.自動化も可能
水耕栽培では多くの自動化装置が開発されています。
そうした装置を導入できれば、手間をかけずに安定した栽培が可能となります。
たとえば自動給水システムは野菜の成長で吸収されたり蒸発したりして失われた水分を自動で調整できるシステムです。
もっと高度なものですと培養液の養分やpHをチェックして、自動で適量に調整してくれる装置もあります。
その他植物育成LEDライトの自動点灯システムや外出先でも管理操作ができるリモートシステムを備えた装置もあり、より手間をかけずに栽培することができるでしょう。
水耕栽培のデメリット
- 根もの野菜や大型野菜の栽培が難しい
- 水耕栽培キットが高額
1.根もの野菜や大型野菜の栽培が難しい
ニンジンやジャガイモなどの根もの野菜は根が大きくなります。
水耕栽培の場合、根に対して培養液の浸し具合の調整が非常に難しく、なかなか大きく成長させられません。
根を可食する根もの野菜は常に水分に浸かっていたり湿度が高かったりすると、腐敗しやすくなります。培養液にずっと浸かり酸欠状態になるからです。
水耕栽培は基本的に省スペースでコンパクトな道具が多いため、根もの野菜や大型野菜のようなものは不向きです。
2.水耕栽培キットが高額
自動化されている水耕栽培キットは、高額なものが多いのが難点です。
家庭菜園にあまり多くの予算を注ぎ込めない人には、なかなか手を出しづらいでしょう。
ですがメーカーで販売されている水耕栽培キットを使わないと育てられないわけではありません。
育てる野菜によってはビンやペットボトル、食品トレイでも育てることができます。
自動化より手間はかかりますが、まずは身の回りのものから手軽に始めて、ハマればキットを購入する形でよいと思います。
水耕栽培向けのおすすめ野菜
初心者向けに育てやすい野菜だけ紹介します。
水耕栽培における実もの野菜は、手間がかかり初心者向けではないので今回は除外しました。
葉もの野菜
- リーフレタス
- コマツナ
- ミズナ
- サラダナ
葉もの野菜の多くは水耕栽培で育てることができます。
3~4時間ほどの日照時間だけで育つ野菜が多く、室内で水耕栽培するのに向いています。
根もの野菜
- ラディッシュ
- コカブ
根もの野菜で育てられるのはかなり限定されます。
基本的に根が肥大する野菜なので培養液に浸し続けると可食部分が腐りやすくなってしまいます。
ハーブ
- バジル
- ミント
- ローズマリー
- イタリアンパセリ
ハーブも葉もの野菜と同様水耕栽培に向いています。
中には長時間の日照を必要とするものもあるので、気をつけてください。
日光の当たりやすい場所に移動させたり、植物育成LEDライトで照らすことが必要になります。
芽もの野菜
- ブロッコリースプラウト
- カイワレダイコン
- 豆苗
- 豆もやし
- アルファルファ
芽もの野菜は水耕栽培にもっとも適した野菜です。
培養液で管理しなくても水の交換だけで7~10日で収穫できてしまいます。
水耕栽培に必要な道具
基本的に以下の3つがあれば栽培可能です。
- 栽培容器
- 培地
- 液体肥料
1.栽培容器
極端なことをいえば、栽培容器は器状になっていればどんなものでも大丈夫です。
メーカーが製造する栽培容器は利便性が高くしっかりしています。
またガラスや透明なプラスチックの素材で製造された製品は、おしゃれにデザインされていてインテリアとしても楽しむことができるのも嬉しいです。
一方でペットボトルや食品のトレイ、牛乳のパックなど代用して活用する方法もあります。栽培が終われば廃棄も楽なので物も増えません。
ポイントは次のようになります。
- 育てる野菜のサイズに合わせて容器を選ぶ
- 光を通さない素材のものを選ぶ
培養液に日光が入ると液中で藻やアオコが発生します。日光を浴びた藻やアオコは光合成によってどんどん増殖が促されていってしまうのです。
増殖すれば培養液が不衛生な状態になり、根に付着したり絡みついたりなどして生育に悪影響を及ぼします。
もともと根は土中の暗い環境で発達するものなので、日光を受けるとストレスになりかねません。水温上昇の原因にもなりますし、根腐れを起こしやすくなります。
光を通してしまう素材であれば、アルミホイルなどを活用してしっかりと遮光しましょう。
2.培地
水耕栽培で使う培地は、日用品で代用できるものと水耕栽培向けに開発された素材とがあります。
- スポンジ
- ハイドロボール
- ロックウール
スポンジ

最も手軽で手に入りやすいのはスポンジです。100円ショップに売っているものでかまいません。
キューブ上に加工して使う方法が一般的で手間もかからずに済みます。
栽培が終わったあとの処理も楽ですし、初心者でも扱いやすくおすすめです。
ウレタンマットが身近にあれば、同様に活用できます。
ハイドロボール

ハイドロボールとは、主に粘土や火山灰を含んだ粘土質の堆積岩を高い温度で焼き上げた天然素材の培地です。
水耕栽培の培地としてよく利用されていて、ポピュラーな素材といえるでしょう。
多孔質で通気性がよく、保水性も高いのが特徴です。根にとっては非常に快適な環境ですので、成長しやすく成功率が高まります。
また加工の際に熱処理を施しているため、無菌状態で製品化され病気にもなりにくいです。
サイズにバリエーションがあるのも特徴です。大粒、中粒、小粒と分かれていて、育てる野菜に応じて選べるようになっています。
中でも使い勝手がよいのは中粒サイズでしょう。多くの野菜に広く適応できるので初心者にも扱いやすいサイズです。
サイズに適応する野菜は以下のようになります。
- 大粒(実もの野菜)
- 中粒(ハーブ、ラディッシュ、葉もの野菜)
- 小粒(ベビーリーフ、サニーレタス、ミズナ)
ロックウール

ロックウールは特に専門機関などの業界で広く使われている素材です。
もともとは建築資材で断熱効果を高めるために開発された素材ですが、水耕栽培でも活用できることがわかってから水耕栽培向けの商品が開発されました。
保水性と通気性に優れ、根腐れをしにくいのが特徴です。
ロックウールも製造の過程で熱処理を施され、無菌状態で製品化されるので病害虫のリスクが極めて低いといえるでしょう。
使用の際に細かい繊維や粉塵が発生しやすいので注意が必要です。しっかりと水洗いをしてから使用するようにしましょう。
また廃棄においては燃えないゴミとして処理をしてください。
3.液体肥料
水耕栽培の肥料には水耕栽培専用のものがあります。
土壌栽培と栄養成分のバランスがちがうので、必ず水耕栽培専用のものを選んでください。
- ハイポニカ液体肥料(協和株式会社)
- おうちのやさい 液肥C 簡単一液タイプ(エコゲリラ)
水耕栽培でもっともポピュラーな肥料はハイポニカ液体肥料(協和株式会社)です。

A液とB液の2タイプの液体肥料を混ぜ合わせて水で希釈して使います。
おうちのやさい 液肥C 簡単一液タイプ(エコゲリラ)は1本タイプで初心者にも使いやすいです。
肥料で必ず必要な栄養成分は窒素、リン酸、カリウム。
中程度に必要なのはカルシウム、マグネシウム、硫黄。
そのほか鉄分、ホウ素、銅、亜鉛などは育てる野菜によって成長を促す成分です。
ピンポイントな野菜に応じた成分を含む肥料もあります。
水耕栽培で成功率が高まる道具
- エアポンプ
- 植物育成LEDライト
- pH測定器・EC計
4.エアポンプ
野菜の根は呼吸を行っており酸素供給が欠かせません。水耕栽培においてはエアポンプを使うことで水中に酸素を取り込むことができます。
土耕栽培では土中のわずかな隙間に空気が入り込み酸素が供給されます。ですが水耕栽培では水に動きを与えないと酸素は取り込めません。
エアポンプで空気を送り込むことで水中に酸素を含み、根に適切な酸素を吸収させることができます。
多くの酸素を吸収することで成長が早まりますし、根腐れなどの生育障害も起こしにくくなるでしょう。
ただ必ずしも必要な道具ではなく、短期間で収穫できてしまう野菜には必要ありません。
省スペースを使った小規模な栽培でも、培養液をこまめに交換するだけで野菜はしっかりと成長します。
5.植物育成LEDライト
日光が入らない栽培環境であれば、準備することをおすすめします。
ほとんどの野菜は成長するのに日光が必要です。日光が入らなければ成功は見込めません。
一般的に水耕栽培に適した葉もの野菜の多くは3~4時間ほどの直射日光が当たれば成長します。その時間を目安に購入を検討するとよいでしょう。
ちなみに陰性植物である大葉なら1~2時間の日照時間で、芽もの野菜なら直射日光がなくても育てることはできます。
6.pH測定器・EC計
水中の状態が酸性かアルカリ性かを測れるのがpH測定器、水中の肥料濃度を測れるのがEC計です。
pHと肥料濃度は適切に調整できると成功率が高まります。
水耕栽培では根の水分吸収や培養液の蒸発、温度変化によってpHも肥料濃度も変化しやすく、マメな管理が必要です。
pHは5.5~6.5の弱酸性が適正範囲で、外れると栄養分の吸収効率が悪化していきます。
肥料は野菜によって必要な量がちがってきますし、成長の過程でも異なります。少なすぎても多すぎても生育障害を起こしかねません。
pH測定器やEC計は絶えず変化していく水中環境を正確に把握するのに役立ちます。
ただしエアポンプと同様に、短期間で収穫できる野菜や小規模栽培なら培養液の交換で解消されることが多いです。
補助的な道具になりますので必要に応じて購入すればよいでしょう。
水耕栽培の始め方
- 水耕栽培では根の部分を遮光すること
- pH測定器やEC計で培養液の成分を正確に把握すること
- エアポンプで培養液に酸素を送り込むこと
ただし短期間の野菜や小規模な栽培なら遮光だけしっかりすれば十分です。
スポンジ
- STEP1
スポンジをキューブ上にカットし、表面に十字の切り込みを1cmの深さほどに入れます。

- STEP2
切り込み部分につまようじや竹串などを使って種を1~2粒まきます。

- STEP3
容器の1/3くらいまで水を入れます(培養液ではなく水でOK)。

- STEP4
発芽して本葉が2~3枚出てきたら培養液で管理します。
根の1/3程度が浸かるように調整してください。
容器が透明な場合は光が入らないように新聞紙などを巻いて遮光してください。
培養液を外光にさらし続けると藻やアオコの発生の原因となり、根が生育障害を起こすかもしれません。

ハイドロボール
- STEP1
ハイドロボールを使うときは表面に粉が付いているので水洗いをします。
水や培養液の交換ができない図のような容器のタイプは、ゼオライトも用意してください。ゼオライトは水質浄化作用があるため、栽培中に発生する有害物質を吸収し根腐れになるのを防ぎます。
目安としては容器の底が見えなくなる程度に敷きつめるか、使用するハイドロボールの5~10%の量を混ぜこむのが適当です。
またハイドロボールは水分調整が難しいので、透明な容器で外から様子が分かるものにするとよいでしょう。

- STEP2
培地の表面に種をばらまきし、表面が浸るぐらいまで水を入れます。

- STEP3
発芽して本葉が2~3枚出てきたら間引きをして培養液に切り替えて管理します。
ばらまきして出た芽が詰まっていたら間引きをしましょう。
培養液は敷きつめたハイドロボールの1/3程度で十分です。浸し過ぎると根が空気に触れられなくなるので注意してください。
またハイドロボールは水分を吸収しますので、底面のハイドロボールが乾いたら培養液を追加する頻度で問題ありません。
ゼオライトを敷きつめておけば藻などは発生しにくいので、基本的に容器を覆い隠して光を遮断しなくても大丈夫でしょう。

水耕栽培の成功のポイント
- 適切な日照時間を与える
- 適正温度に調整する
- 栄養バランスを整える
- 最適pH範囲を保つ
- 培養液の量を管理する
1.適切な日照時間を与える
室内において日照不足になると徒長の原因になります。
芽が出てから苗になるまでしっかりと日光に当ててやることが大切です。
室内において日光が入らなければ植物育成LEDライトを使ってサポートしてあげてください。
2.適正温度に調整する
野菜の多くは適正温度が20〜25度です。
水温も20〜22度が目安です。
温度管理が適切でないとなかなか成長しなかったり枯れたりします。
室内の場合はエアコンなどで温度調節しましょう。
3.栄養バランスを整える
培養液に含まれている栄養バランスが崩れると葉が黄変したりします。
葉もの野菜は主に窒素を吸収して育つので、培養液の中で失われやすいです。
また実もの野菜では苗が成長するときは窒素を吸収しますが、実をつけ始めるとリン酸を吸収するようになります。
成長過程によって必要とする養分が異なるので、それに合わせて肥料を補給するようにしましょう。
4.最適pH範囲を保つ
pHの適正範囲は5.5〜6.5の弱酸性です。
水耕栽培においては栽培の過程で数値が大きくなり、アルカリ性に傾く傾向にあります。
たとえば水道水にカルシウムやマグネシウムを多く含むとアルカリ性に偏りやすくなります。
光合成でCO₂を消費する際や、水分の蒸発などでpHの数値が高くなります。
5.培養液の量を管理する
培養液は多すぎても少なすぎてもいけません。
浸しすぎると根が酸素不足に陥りやすくなりますし、少なすぎては根が乾燥してしまいます。
根の1/3程度が浸かるように調整してください。
まとめ
- 成長が早い
- 病害虫が少ない
- 農薬使用量の削減
- 品質が安定する
- 自動化も可能
- 根もの野菜や大型野菜の栽培が難しい
- 水耕栽培キットが高額
- リーフレタス
- コマツナ
- ミズナ
- サラダナ
- ラディッシュ
- コカブ
- バジル
- ミント
- ローズマリー
- イタリアンパセリ
- ブロッコリースプラウト
- カイワレダイコン
- 豆苗
- 豆もやし
- アルファルファ
- 栽培容器
- 培地
- 液体肥料
- エアポンプ
- 植物育成LEDライト
- pH測定器・EC計
- 適切な日照時間を与える
- 適正温度に調整する
- 栄養バランスを整える
- 最適pH範囲を保つ
- 培養液の量を管理する
土耕栽培でも水耕栽培でも、野菜にとって快適な環境づくりを続けていくことが大切です。
小さなスペースで始められるので気軽に取り組んでみてください!


