「苗の選び方がわからない」
「良い苗の見分け方は?」
「種から育てるのと苗から育てるので何がちがうの?」
良い苗を選ぶ目を持つことは家庭菜園において非常に重要です。野菜栽培の一歩目でもありますので、正しく見分けられないとその後の栽培に影響を及ぼしかねません。
ここでは良い苗の選び方のポイントを中心に、苗の種類や苗の適切な植え付け方について解説していきます。
また種から栽培しときと比べてどんなメリット・デメリットがあるのか、初心者におすすめの苗から育てたほうがよい野菜についてもお伝えしますので、苗の知見が深まる内容になっています。
それでは、まいりましょう!
良い苗の選び方
苗を選ぶのに気をつけるべきポイントを部位別に見ていきましょう。
1.根を見る
- 根がポリポットの底穴から少し見える
- 白い根が健康の証

店頭に並んでいる苗のポリポットを下から覗いてみましょう。ポリポットの底穴で苗の良し悪しを判断します。
理想的なのはポリポットの底穴から根が少しだけ見えている状態です。見えていないものはまだ根の生育が足りません。苗としてはもう少し成長させたいところです。
逆に根が底穴から出てしまっているものは、ポット内に根が周りきって根詰まりを起こしている可能性があります。そうした苗は移植するときに根が絡まっていて上手く伸びていきません。植え付ける時期を逃した苗といえます。
また底穴から見えている根の色が鮮やかな白色をしているのが健康な根の証です。黄色っぽくなっていたり茶色くなってしまっているものは、根が腐りかけていますので避けましょう。
2.茎を見る
- 茎ががっしりしている
- 節間が短い

次に茎ですが、がっしりとしていて太く、少々の揺れではふらつかないものがよいです。
また節間(葉の生えぎわ同士の間)が短いものを選んでください。節間が長いものは日照不足で徒長していて、茎もひょろひょろと細長くなっているものが多いです。
短く太いものであればしっかりした苗といえます。
3.葉を見る
- 葉にツヤがあり活き活きしている
- 厚みがある
- 緑が鮮やか
- 本葉が3〜4枚ついている
- 子葉がついている
- 葉の表面や裏側に病気の斑点がなく害虫がいない

葉は緑色が鮮やかで張りがあるものを選びましょう。緑色が薄くなっていたり黄色く変色してしまっているもの、しなびているものは良い苗とは言えません。
子葉という発芽したときの一番最初の双葉がしっかりとついたものがよいです。子葉も緑色が鮮やかで張りがあるものを選びます。
加えて本葉が3~4枚ついていれば苗としてしっかりしたものだと判断してよいでしょう。
葉の表面や裏側もチェックしてください。病気の斑点がついていたり、害虫もしくは害虫が産みつけた卵がある場合があります。特に裏側は見落としやすいので、意識的にチェックしたほうがよいです。
4.蕾を見る
- 実もの野菜では花や蕾が付いているか確認

実もの野菜では花や蕾が付いているか確認をしてください。苗の成熟度の目安になります。
苗に花や蕾が付いていると着果しやすく、スムーズに実を太らせることができます。
ただし、花が多く咲き切っているものは選ばないようにしてください。なぜなら、そうした苗は間もなく花を落とすと着果のために栄養を使うようになります。その時点で苗を植えてしまうと、根付くのに十分な栄養が回らず根付きが悪くなったり、着果が遅れてしまうことになりかねません。
すぐには咲かない蕾段階のものであれば、花が咲いて落ちる前に苗が根付く時間を十分に取れますので、スムーズに成長していきます。小さな蕾状のものや咲き始めの段階の苗を選ぶとよいでしょう。
目安としては蕾や花が1~2輪ほど付いているものがベストです。
苗には2つの種類がある
実は苗には2つの種類があります。
ひとつは接木苗(つぎきなえ)といいます。
この苗は2種類の植物を人工的に掛け合わせて育てやすくした苗です。
もうひとつは自根苗(じこんなえ)または実生苗(みしょうなえ)といいます。
こちらは人工的な処置をせず、純粋に植物が持つ特性のみで育った苗です。
ここではそれぞれの苗の特性について説明していきましょう。
1.接木苗
- 2種類の植物を人工的につなぎ合わせた苗
- 根元に接ぎ目がある
- 土壌由来の病害に耐性がある
- 生育障害が起こりにくく収穫成功率が高い
- 自根苗より高価
接木苗は2種類の植物を人工的に掛け合わせた苗のことをいいます。
それぞれの根の部分と葉の部分を茎でつなぎ、茎に接ぎ目があるのが特徴です。

それぞれの植物の長所を融合させて育てやすくするために技術が開発されました。
接木苗の一番の目的は病害虫に強くすることです。
たとえば土壌由来のつる割病を発生しやすいスイカは、根の部分を病害耐性の強いユウガオと掛け合わせた接木苗が登場したことによって安定した生育が可能となりました。
また病害だけでなく同じ品目を作付けする際に起こる連作障害も少ないです。
現在ではナス、トマト、ピーマン、キュウリなどのナス科野菜やウリ科野菜はよく接木苗が並んでいます。
自根苗に比べて育てやすさは格段に上がりますが、一般的に高価であることが多いです。
2.自根苗(実生苗)
- 1種類の植物が持つ特性のみで育てた苗
- 土壌由来の病害に十分な対策が必要
- 野菜本来の豊かな味わいがある
種から苗になるまでその植物が持つ特性のみで育てたものはすべて自根苗または実生苗といいます。

前出の例に挙げたスイカやナス、トマト、キュウリなどはもともと病害を受けやすい性質があります。
ですのでこれらの野菜を自根苗で育てる場合は、土壌由来の病害に十分な注意が必要です。
育てやすさでは接木苗のほうが大きなメリットがありますが、自根苗のほうはその野菜が持つ本来の味わいが感じられます。
たとえば自根苗で育てたスイカと接木苗で育てたスイカを食べ比べると、自根苗のほうが風味が豊かでシャリ感がやや強い印象があります。
素材の味にこだわりたい方には自根苗がよいかもしれません。
3.選び方のポイント
- 育てやすさ
- 価格
- 味わい
育てやすさという点においては接木苗をおすすめします。
特に家庭菜園初心者にとっては、生育も安定しますし収穫量も多く成功しやすいといえます。
また連作障害の懸念がある土壌でも接木苗を選ぶのがよいでしょう。
一方で、野菜本来の味を楽しみたいのであれば自根苗がよいです。品種によっては耐病性に強く改良が進んだものもありますので、販売員に相談してみるのもよいかもしれません。
予算や栽培環境、経験値に応じて選び方を変えれば楽しめると思いますので、いろいろ試してみてください。
苗から育てる家庭菜園

種から育てるのに比べて、苗から育てるのにはどんなちがいがあるでしょうか。
ここでは苗から育てる場合のメリット・デメリットについてお話ししていきます。
1.メリット
- 収穫までが短い
- 発芽に失敗のリスクがないので育てやすい
- 種まきの季節を外しても育てることができる
種と比較したときに収穫までの栽培期間が短くなるのはメリットのひとつです。
種から発芽し本葉を付けていくまでの工程をショートカットできるので、工程数が減り早く収穫できます。
特にトマトやナス、キュウリなど実もの野菜の多くは本葉を付けるまでの工程が難しく、家庭菜園初心者は苗から育てるのが一般的です。
実もの野菜のようなひとつの株からいくつも収穫できる野菜は、徹底した発芽管理を求められるので失敗のリスクが高く、そうした意味でも苗から育てるのはメリットになります。
また目的の野菜の種まき期を逃した場合でも、苗を購入することで育てることが可能です。
発芽適温期を逃した野菜は種から育てるとなかなか生育が進みません。苗が販売されていれば苗から育てたほうが収穫までのハードルが下がります。
2.デメリット
- コストが高い
- 選択肢が限られる
- 病害虫を持ちこむ可能性がある
デメリットで言うと、種よりコストが高くなることが挙げられます。
プロの手によって成長しやすくなる段階まで育ててくれるので、その分高くなってしまうわけです。
たとえばミニトマトの場合、種袋で購入すると500円前後で15粒くらいが目安で種1つで約30円ほどになります。苗は1ポットで100~300円くらいが相場です。
ただし発芽管理の難しさを考えると驚くほど高いわけでもありません。プランターに1苗植えて手軽に育てたい人は却って安くすむともいえます。
デメリットの2つ目は育てられる野菜が限られてしまうことです。
基本的に季節に応じて苗が店頭に並びますが、育てたい野菜が必ずしも並んでいるとは限りません。特に珍しい野菜を苗から育てたいと思ってもないことがほとんどです。
種苗業者や小売店も商売ですので人気のあるものが多く並びます。品揃えも店舗によってさまざまです。時期やタイミングによっては選択肢が少なくなることを考慮する必要があります。
3つ目には病害虫を持ち込む可能性があるということです。
苗を見分ける際に虫がついているものはすぐにわかりますが、苗の土に病原菌が潜んでいることもないとは限りません。
基本的に種苗のプロが育苗するので安心だとは思いますが、万に一つそうした可能性があることも知っておいたほうがよいでしょう。
苗から栽培するのに適した野菜
ここでは特に初心者向けに苗から栽培することをおすすめする野菜を挙げていきます。
野菜別に苗から育てる理由を分類して説明しますので、理解深まれば幸いです。
1.発芽管理が難しい

- トマト
- ナス
- ピーマン
- キュウリ
- バジル
- ミント
これらの野菜やハーブは、発芽してから本葉をつけるまでの工程が難しいのが特徴です。
発芽適温の範囲で管理し、日射量や水分管理、栄養管理、生育適温の管理などを徹底しないとなかなか苗まで成長してくれません。
またトマトやナス、ピーマンなどのナス科の植物は育苗期間が長く、60~80日が一般的です。
長い育苗期間で環境や管理がうまく整わず、育てたくても失敗をくり返しては家庭菜園がイヤになってしまいます。
特に家庭菜園初心者には上記の品目を栽培する場合は、苗を購入したほうがよいでしょう。
2.栽培期間が長い

- キャベツ
- ハクサイ
- ブロッコリー
- カリフラワー
これらの野菜は成長に時間がかかるため、収穫までを早める意味で苗から育てるのがおすすめです。
季節や品種によって栽培期間は変わりますが、種まきから収穫までおおむね90~120日程度かかります。苗になるまでに約30~40日を要するので、苗から育てることで収穫までの期間がグッと短くなります。
また上記の野菜は育苗期に病害虫を発生しやすいのも特徴です。適切な方法で生育していかなければたちまち病害虫の餌食となってしまいます。
以上のようなことから、上記の野菜を育てたい場合は苗を購入するとよいでしょう。
3.高度な栽培技術を必要とする

- メロン
- スイカ
メロンやスイカは特に栽培が難しい品目です。
メロンは育苗期間を30日程度と比較的短い期間で行う必要があります。それ以上時間がかかると定植の際に根の張りや活着が悪くなり、生育障害を起こしやすくなるのです。
この育苗技術は一朝一夕でできるものではありません。熟練の生産者でなければ難しいでしょう。
スイカは病気に弱く、「つる割病」を起こしやすい野菜です。
一般的に接木苗(つぎきなえ)で病害虫に対する耐病性を高めて、生育が行われます。接木苗とは他の野菜の良い特徴を掛け合わせる技術で詳細は後述します。
高い技術が必要となるメロンやスイカは、苗から育てるのがおすすめです。
苗を植え付けるポイント

育てたい苗を購入したら、次は苗の定植(新たな培養土に植え付けること)です。
ただし定植する前にいくつか確認しなければならないことがあります。
- 植え付け時期を確認する
- 植え付ける前は苗に水やりをしておく
- 植え付けるときの天候に注意する
- 苗の株元と定植する土が同じ高さになるように植え付ける
1.植え付け時期を確認する
苗を購入する際には植え付け時期と気象環境を確認してください。
店頭に苗が並んでいるからといって、必ずしもすぐに植え付けてよいとは限りません。苗としては成長しているものの、天候や気象環境が整っていなければうまく育たないことがあります。
たとえば温室環境で育苗している場合は外環境の影響を受けにくく、気象環境とは関係なく育てることができます。そのため苗は販売されていても、定植する気象環境が整っていないことがあるのです。
また天気予報を確認しておくことも大切です。季節はずれの気温であったり、豪雨や強風などが予想される場合は購入するタイミングをずらしたほうがよいでしょう。
2.植え付ける前は苗に水やりをしておく
苗を購入したら植え付ける前に水やりをしておきましょう。
ポリポットから取り出すときに根鉢(育苗した土に根が回って固まった状態)が崩れにくく作業がしやすくなります。
植え付けるときに根鉢が湿っている状態がベストで、水やりは植え付ける直前ではなく前日に済ませておくことがポイントです。
直前に水やりを行うと根鉢がべちゃべちゃと崩れてしまうので注意してください。
一方乾燥した状態では、植え付ける際にぐらついたり根を傷つけたりする恐れがあり、その後の根付きに影響が出ることもあります。
根鉢が湿って固まっていればよいので、十分に湿っていれば過度に水やりをする必要はありません。
3.植え付けるときの天候に注意する
苗を植え付けるときは天候や気象条件に十分注意が必要です。
苗は育ってきた環境とこれから育つ環境にギャップがあるとストレスがかかり、うまく順応できない場合があります。育てる野菜に応じた適応しやすいタイミングで植え付けを行いましょう。
真夏の日照りの強い時間や真冬の寒さが厳しい時間などは避けてください。また風が強い日も避けたほうがよいでしょう。
苗が新たな環境に根付くまでは、極端な気象条件にさらさないことがうまく育てるポイントです。
4.苗と土が同じ高さになるように植え付ける
植え付け作業でのポイントは、苗の株元と定植する土が同じ高さになるようにすることです。株元に薄く土を被せて仕上げるとよいでしょう。
双葉が埋まってしまうくらい深く植えたり、逆に根鉢が見えるくらい浅く植えたりすると生育障害を起こす可能性があります。
双葉が埋まってしまうと光合成ができなくなり、活着(土に根付くこと)がうまくいかなかったり、苗の成長を阻害する原因になりかねません。
根鉢が見えるくらい浅いと根が地表付近を張りめぐらせるため、倒伏しやすくなったり、乾燥や温度変化を受けやすくなります。
どちらの場合も苗がうまく育たなくなるので注意してください。
まとめ
- 根がポリポットの底穴から少し見える
- 白い根が健康の証
- 茎ががっしりしている
- 節間が短い
- 厚みがある
- 緑が鮮やか
- 本葉が3〜4枚ついている
- 子葉がついている
- 葉の表面や裏側に病気の斑点がなく害虫がいない
実もの野菜では花や蕾が付いているか確認
- 2種類の植物を人工的につなぎ合わせた苗
- 土壌由来の病害に耐性がある
- 生育障害が起こりにくく収穫成功率が高い
- 1種類の植物が持つ特性のみで育てた苗
- 土壌由来の病害に十分な対策が必要
- 野菜本来の豊かな味わいがある
- 収穫までが短い
- 発芽に失敗のリスクがないので育てやすい
- 種まきの季節を外しても育てることができる
- コストが高い
- 選択肢が限られる
- 病害虫を持ちこむ可能性がある
- 植え付け時期を確認する
- 植え付ける前は苗に水やりをしておく
- 植え付けるときの天候に注意する
- 苗の株元と定植する土が同じ高さになるように植え付ける
正しい苗の選び方を知っておくことで失敗が少なくなり、家庭菜園のモチベーションは上がっていきます。
いろいろと覚えることが多いように思えますが、慣れれば瞬間的に見分けることができますのでご安心ください。体験していけばそれほど難しいことではありません。
ある程度栽培することに慣れたら、自らの手で苗を作るのも面白いです。ぜひ挑戦してみてください。

