プランター栽培は家庭菜園をこれから始める初心者にとって、とても始めやすく手軽な栽培方法です。
ですが、いざプランターを買おうとネットで調べたり、園芸用品店へと足を運ぶとこんな声が聞こえてきます。
いろんなものがありすぎて、どれを選んだらいいかわからない……
確かにそうなんです。
商品を見渡せばさまざまな形や大きさ、素材といった多種多様なプランターが目に入ります。多くの園芸用品に携わる企業が日々努力を重ねて開発した賜物とも言えます。その数たるやとても数えきれるものではありません。
そうしたプランターの数々も一つ一つひも解いていけば、何かしらの目的や好みに合うように作られていることが分かります。それが理解できれば、どのように選べばいいのか自ずと分かるようになります。
ここでは、さまざまなプランターの特徴とその目的に合った選び方を徹底的に掘り下げていきたいと思います。
それでは参りましょう!
1.プランターを選ぶ前に
まずはプランター選びを始める前に決めておかなければいけない大切なことがあります。
1-1.育てる野菜を決める
一つ目は育てる野菜を決めることです。
プランターは育てる野菜によって大きさが変わってきます。
たとえば実もの野菜の多くは一つの株が大きく成長していきますので、深めのプランターでないと安定せずに倒れやすくなってしまいます。
また根もの野菜も深さが十分にあるプランターでなければ、根が思うように伸びず生育障害を起こすことになるでしょう。
葉もの野菜などであれば葉っぱ同士が成長の妨げにならないように広めのプランターが適しています。
このように野菜の特性に合わせたプランターを選ばないと、それが原因でうまく育たないなんてことになりかねません。
そのため育てる野菜を決めておくことはプランター選びの重要な指標となります。
1-2.育てる場所を決める
二つ目は育てる場所を決めることです。
プランター栽培をする場合、主に庭・ベランダ・玄関・屋上・室内と多くの場所を選べます。ただし、その場所の環境は人それぞれちがうものですよね。家庭菜園に使えるスペースがどれだけあるのかで選ぶプランターの大きさも変わってきます。
広くて自由が利くのであればどんなプランターでも選べますが、限られたスペースの場合だと使えるプランターのサイズを考える必要が出てきます。
もしスペースに制限があるならば、先に使えるサイズのプランターを決めてから、育てる野菜を選ぶという流れになります。
2.プランターの大きさ
まず最初にプランターでチェックするのは大きさです。そしてプランターの大きさの目安となるのが深さになります。
先述しましたが、野菜はそれぞれ根の張り方にちがいが出てくるものです。また株が成長する大きさもさまざまなのでその野菜に合った深さのプランターを選ぶことが非常に重要になります。
それではプランターの大きさにはどのようなものがあるのか。大きさは以下のように分類されます。
2-1.浅型
一つ目は浅型プランターと言って、深さが10~15cmぐらいのもの、容量が6~12ℓほどになります。
栽培期間の短い野菜や、丈が短く根を深く張らない野菜に適しています。
基本的に土の量が少ないため水はけはよいのですが、反面乾きやすくもあるのでこまめな水やりが必要になってきます。また軽量ですので持ち運びが楽なのも浅型の特徴です。
浅型に適した野菜は以下のようなものになります。
2-2.標準型
二つ目は標準型プランターと言い、深さが20cm前後のもの、容量は12~20ℓぐらいです。
これも栽培期間が比較的短い野菜が適しています。浅型よりは丈の長いもの、根が深く張るものに適応しますので使い勝手がよく、一年を通して活躍し続けられるサイズと言えるでしょう。
標準型に適した野菜は以下になります。
2-3.深型・大型
三つ目は深型プランターや大型プランターと言います。どちらもサイズの大きなプランターですが、深型ですと深さが30cm以上のもの、大型なら25~35cmぐらいになります。容量は深型で20~30ℓぐらい、大型なら30~40ℓほどで、深型タイプの方がより深さに特化した形状と言えます。
栽培期間の長い野菜や丈が高くなる実もの野菜、土中に深く成長する根もの野菜やイモ類などに適しています。
プランター栽培の中で最も土が必要になる大きさです。畑の環境に近く、水やりの頻度は比較的少なくて済みますが、排水性を整えるのに注意をしなければなりません。
適した野菜は以下の通りです。
3.プランターの形状
次に形状のちがいを説明していきます。
形状は野菜の特性に即した形のものもあれば、デザイン性を加えたものもあります。家庭菜園をインテリアの一部として生活に取りこむのも楽しみの一つであるので、その形状も多様にあります。
ここでは代表的な形状のものを分類してお伝えしていきたいと思います。
3-1.丸型
観葉植物などでもよく見られるのが丸型のプランターです。
直径を大きさの目安としており、『3㎝=1号』と換算してサイズを表すことが多いです。仮に24㎝の直径の丸型プランターであれば『8号』と表記します。
丸型は株が大きく成長するもの向けの形状で、実もの野菜や大型の根もの野菜を育てるのに適しています。
特徴としてはデザインが非常に豊富ですので、好みに合ったものを見つけやすいと思います。さらには材質の種類も多く、インテリアの面においても楽しめるのが丸型プランターと言えるでしょう。
ただし、後述する長方形型や正方形型に比べてスペース効率が悪くなりやすい傾向にあります。並べて配置をすると隙間が出てきてしまうのが難点とも言えます。
また底面が丸いため不安定になりやすくもあります。特に丈が高くなる野菜は風による転倒に注意をしておく必要があるでしょう。
3-2.長方形型
プランターで代表的な形状とも言えるのがこの長方形型です。
横幅を大きさの指標として表記することが多いです。たとえば45cmの幅のものならば『45型』や『450型』といった形で表記しています。
横に長いので、主に株を並べて栽培する葉もの野菜やハーブを育てるのに適しています。サイズが大型のものになれば複数の野菜を同時に育てることも可能です。
また、角形ですので並べて配置をしても余分に場所を取らず、スペースを効率的に使うことができるのも利点と言えます。
軽くて扱いやすく利便性を重視したものが多いですが、その一方で材質が限られるなどのデザイン性にやや乏しい面があります。
3-3.正方形型
正方形型のプランターも使い方としては丸型に近く、株が大きく育つ野菜に適しています。
長方形型と同様で、並べて配置したときにスペースを無駄なく使えるのが特徴です。
また底面が四角いので丸型よりも安定性に優れてもいます。
デザインはシンプルですがモダンな雰囲気のものが多く、アーバンシックなインテリアが好みの人には合うかもしれません。
3-4.ハンギング型
ハンギング型とは壁掛け式や吊り下げ式のプランターです。
主に小型のものが多く、空間を利用できるのが最大の特徴です。ですから限られたスペースしかない人にとっては有効的に活用できるでしょう。
加えて風通しもよくなるため病害虫による被害のリスクが軽減されるのも、他の形状にはない大きな利点と言えます。
空間の彩りとして独特な景観を楽しめますが、落下のリスクがありますので固定の仕方を工夫したり、風の強い日などは外して対処をするなど、ちょっとした手間が出てくると思います。
4.プランターの材質
最後にプランターの材質のちがいについて説明していきます。
材質のちがいは主に軽量性や耐久性、デザイン性などに表れます。高い利便性や栽培の必要な機能性、インテリアとしてのデザイン性、どこに重点を置くかは人それぞれだと思います。
ここではその材質のちがいによるメリット・デメリットを挙げながら、その特徴をお伝えしていきましょう。
4-1.プラスチック製
どの大きさ、どの形状においても幅広く使われているのがプラスチック製です。
プラスチック製のものは軽量で持ち運びがしやすく比較的安価なものが多いです。さらにはカラーバリエーションも豊富でデザイン性に優れたものが多く、初心者にとって取り扱いやすいと思います。
その反面、通気性と排水性が低いため根腐れのリスクがあります。現在はスリットなどを入れて排水性を向上させたデザインのものも多くありますので、そういった機能性もよく観察して選ぶとよいでしょう。
また気温の影響を受けやすいので暑い日や寒い日は、土中環境を保つための対処が必要になるかもしれません。
4-2.素焼き製
素焼き製は別名テラコッタとも呼ばれ、粘土を形成して焼き上げたプランターです。
材質が多孔質のため通気性と排水性が高く、土中環境に好循環をもたらします。それゆえ酸素が行き渡りやすく、余分な水分を排出するので根の成長を促します。逆に言えば土が乾燥しやすくもあるので、こまめな水やりが欠かせなくもあります。
材質が重いので比較的安定感はありますが、衝撃に弱く割れやすいので取り扱いに注意が必要です。
4-3.木製
木製も素焼き製と同様に通気性と排水性に優れています。加えて気温の影響を受けにくいため、土中の温度管理もしやすいです。
さらには自然環境に調和して美的景観がよく、樽型やスタンド型など独特のデザインを施したプランターもあるので目でも楽しめます。
自然素材なので経年劣化しやすく、他の材質に比べると寿命が比較的短いのは難点かもしれません。
4-4.陶器製
陶器は素焼きの表面に釉薬をほどこして光沢を与えたものです。素焼き製と比べると通気性や排水性に劣りますが、保水性が高いという利点が挙げられます。
陶器製の最大の特徴はデザイン性の高さです。さまざまな模様や色づかいであったり、動物に模した形状のものなど、遊び心にあふれたものが多いです。
家庭菜園をインテリアの一部として楽しむ人に向いている材質かもしれません。
4-5.FRP(繊維強化プラスチック)製
繊維強化プラスチックとは繊維を強化材料として加えたプラスチック素材で高い強度を持ちます。
耐久性ではどの材質よりも優れていてなおかつ軽量さも兼ね備えているので、大型のプランターでよりその効果を発揮します。
またデザインにおいてもシンプルでスタイリッシュなイメージからレンガ調や木製に模した自然に調和するものまで比較的幅広いと言えます。
価格が高くなる傾向にあるのが難点ですが、耐久性の高さから長期的に利用できることを考えるとコストパフォーマンスも決して悪いものではないと思います。
4-6.不織布製
不織布製プランターは丸型のものが多く、大きさを「ガロン」という単位で表しています。『1ガロン=3.78ℓ』で約4リットルと計算すれば分かりやすいでしょう。
最大の特徴はずば抜けた軽量性と言っていいでしょう。取っ手の付いているものが多く持ち運びしやすいのが利点と言えます。さらに、使わないときは折り畳んでしまっておけるので保管するのに場所も取りません。
また素材の性質から通気性にも非常に優れているので土中に十分な酸素を含みますし、排水性も高いため根腐れしにくく健康的な根の成長を促します。
その一方で、耐久性に劣るところが弱点でもあります。ただ使えなくなった場合でも燃えるゴミとして処理できますので、後始末が楽だと捉えることもできます。
4-7.金属製
金属製のプランターは非常に高い耐久性を持つ材質です。適切なメンテナンスを欠かさなければ10年単位で使い続けることもできます。
素材の特性ゆえに近未来的なデザインが多くスタイリッシュな景観を演出しますし、ブリキ製のものはローマ字の入ったデザインもあるので西洋風の空間作りに一役買ったりします。
ただし熱伝導率が高いため気温の変化を受けやすく土中環境への影響が大きいです。ですので置き場所には注意をしてください。
また一般的に通気性と排水性が低いので、排水穴を作って排水性の高い土を用意する必要が出てくるでしょう。
4-8.リサイクル素材
リサイクル素材のプランターは環境への負荷の軽減に大きく貢献をしています。
たとえば家庭から出るプラスチックごみを主な原料としたリサイクルプラスチック製プランターは、プラスチック製の機能を損なうことなく石油資源の節制に寄与しています。
また古紙を原料としたパルプモールド製のプランターなどもあり、有機素材を再利用しているためそのまま土に還すこともできます。軽量性が高く、ある程度の衝撃にも耐えるので、プランターとしての機能も十分に果たしています。
まとめ
ここまで見てきましたようにプランターの大きさ・形状・素材はそれぞれ一長一短があります。この一つだけあればすべてをカバーできるというものではありません。育てる野菜や場所、それから好みに合わせれば、それなりに選ぶべきプランターが絞られてくると思います。
その上で初心者向けにおすすめするのであれば、標準型サイズの長方形型プラスチック製プランターになるでしょうか。
ほどよいサイズ感でいろんな野菜に挑戦できますし、軽くて安価ですので扱いやすいと思います。
あくまで目安ですので、お住まいの環境に合わせて選ぶのに参考にしてみてください!